日本国憲法下の超能力
Supernatural Powers In Regular Life
(5) 朝が来る前に




 今日もいろんなことがありました。
 あ。と思ったらもう越えていた。
 線路に落ちる奴ってこんな感じかもしれない。
 気付いた時にはもう修正不可能な体勢になっている。
 前から危ないと思ってたんだ。
 過労死する奴もこんな感じかも。
 低い安全柵を乗り越えちゃったらもう体重が下へ行ってしまって、体が夢の中みたいに動かない。
 息を吸う間に頭が下になって、目に映るのは非常階段の天井灯ばかり。それが一気に遠ざかる。


 死ぬ。


 いや違うな。こんな感じだ。


 死ぬうううううう


 伸びたそうめんみたいになすがままになっていた俺の身体を、次の瞬間誰かが背後からわし掴みにした。
 大きな男の笑い声が全身に響くのと同時だった。


 あはははははは!!
 あはははははは!!
 あーはははははは!!


 世界のすべてのことを笑い飛ばすかのようにそいつは笑った。


 一体に、おもしろいことが起きるな世の中は!


 りんだと分かった時、ものすごい鼻水が出そうになって泡を食った。
 声を出す直前に意識が飛ぶ。
 まるで夢みたいに。









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